
皆さん、こんにちは!兵庫県でギター女子をやっている、さくらです!
元西播磨県民局長による内部告発文書をきっかけに、斎藤知事やその側近たちのさまざまな問題が明らかになった、いわゆる「文書問題」ですが、これについては再び行われた兵庫県知事選挙において、斎藤知事が再選を果たしたことにより、一応の決着を見たかのように思えましたが…
一方で、兵庫県政の混乱は収まる気配がないどころか、さらに強まっているのが現状です。
そうした中、2025年3月4日、一連の問題を兵庫県議会として調査していた百条委員会(文書問題調査特別委員会)が報告書を作成し、その結果が委員会としてオーソライズされました。
いろいろあった百条委員会ですが、その結果をどう総括したのか…。
本日は、兵庫県在住のギター女子・さくらが、兵庫県の百条委員会(文書問題調査特別委員会)がとりまとめた報告書について、解説させていただこうと思います。
そもそも百条委員会とは
まず、そもそも百条委員会とは何かについて、簡単におさらいしておきましょう。

百条委員会のしくみをご存じの方は、この段落は読み飛ばしても大丈夫です!
地方自治法第100条に基づく法的根拠
百条委員会の根拠は、地方自治法第100条に明確に定められています。
この条文の第1項では、「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる」といった趣旨のことが規定されています。
地方自治法(抜粋)
第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
つまり、地方議会は自治体の事務に関して調査権を持ち、必要に応じて関係者を呼び出し、証拠を収集する権限が与えられているのです。
この権限は「百条調査権」とも呼ばれ、国会の国政調査権に匹敵する強力なものとされています。
さらに、第3項では、正当な理由なく出頭や証言を拒否した場合、6ヶ月以下の禁錮または10万円以下の罰金が科されることが明記されており、第7項では虚偽の証言に対して3ヶ月以上5年以下の禁錮刑が科されると定められています。
このように、地方自治法第100条は、百条委員会に、刑事罰も含めた強力な権限を与えることで、地方議会が行政を監視し、住民の利益を守るための基盤を提供しています。
法的根拠が明確であるからこそ、百条委員会は信頼性と権威を持って機能し、自治体の透明性を高める役割を果たすのです。



実際、斎藤知事も最初の頃は「法的根拠がある百条委員会でしっかり説明する」と言っていたんですよね。
百条委員会の特徴と強力な調査権限
このように、百条委員会の最大の特徴は、その強力な調査権限にあります。
通常の議会質問や委員会では、関係者の出席や証言は任意に委ねられることが多いですが、百条委員会では法的な強制力を持って証人喚問や資料提出を求めることができます。
これは、地方自治法第100条が定める「出頭及び証言並びに記録の提出を請求する」権限に基づくもので、関係者が協力しない場合でも、罰則を背景に真実を明らかにするプロセスを進めることが可能です。
また、虚偽の証言には厳しい罰則が科されるため、証人の発言に高い信頼性が求められる点も、百条委員会の特徴です。これにより、隠された事実を明るみにし、公正な判断を下すための土台が築かれます。
この強力な権限は、議会が行政の執行機関を効果的に監視する
「伝家の宝刀」
とも称されます。
普段は使用されない特別な手段であるからこそ、その設置自体が問題の重大性を社会に訴え、県民の関心を喚起する効果もあると言えるでしょう。
民主主義における百条委員会の意義
百条委員会の意義は、地方自治における民主主義の強化に大きく寄与する点にあります。
地方議会は住民の代表として、行政の運営を監視し、不正や疑惑があればそれを正す責任を負っています。しかし、通常の議会活動では限界があり、特に深刻な問題に対しては十分な調査が難しい場合があります。
そこで登場するのが百条委員会であり、その法的権限を活用することで、行政の透明性と説明責任を確保するのです。
さらに、百条委員会は県民の「知る権利」を守る役割も果たします。
疑惑が放置されれば、行政への信頼が揺らぎ、住民の不信感が高まる恐れがあります。
しかし、百条委員会が真相を追求し、その結果を公表することで、県民は事実に基づいた判断を下すことができ、行政に対する信頼を回復するきっかけにもなります。
この点で、百条委員会は単なる調査機関を超え、民主主義の健全性を維持するための不可欠な存在と言えるのです。
百条委員会(文書問題調査特別委員会)の報告書
さて、そんな百条委員会…兵庫県においては「文書問題調査特別委員会」という名称でしたが、この百条委員会が、今般、報告書案をとりまとめ、委員会に諮りました。
この百条委員会を、委員長として運営していたのが、自民党の奥谷謙一県議。さまざまな議論があったかと思いますし、選挙期間中には自宅前で街宣活動をされたりと、かなりの苦労があったかと思いますが、それを乗り越え、今回の報告書完成に至りました。
この報告書案は、3月5日の本会議において議決がなされるとのこと。そして、この報告書案は、兵庫県議会のホームページに、早速掲載されています。
ということで、この報告書のみどころ、いくつかピックアップして、解説させていただきます。
【ポイント①】パワハラは詳細に記述の上「不適切なもの」と断罪
まず、本報告書において、一番詳しく書かれていたのが、文書問題のうち、パワハラに関する記述…正式には
7 知事のパワーハラスメントについて
という段落です。
ここについては、百条委員会も斎藤知事はもちろんのこと、各案件の被害者など、さまざまな関係者を招致してヒアリングを行い、聞き取りの上、事実関係を丁寧に積み上げていったところでした。


その中で、百条委員会として認定した事実として、以下の7つを挙げています。
- R3のフェニックス用地事案における叱責事案
- 施設の開設を「聞いてない」と叱責⇒開所式スケジュール変更事案
- 更衣室に知らない男性がいて叱責した事案
- 考古博物館20メートル歩かされて激怒事案
- 片山副知事に対してふせんを投げた事案
- 空飛ぶクルマ知事直轄事案
- 休日・夜間に大量のチャットを送った事案



私の方で個別記事を書いた事案もありますね。


そして、これらの事実について、
- 厚生労働省のパワハラ防止指針に定める定義に該当する可能性がある、不適切な叱責である
- 原課の説明をよく聞かずに「聞いていない」と叱責するなど、事業の関心度合いによって認識の差があり、説明を聞く姿勢に欠けている
- 部下には高い水準を課しながら、自分はその基準を守らず特別扱いとする態度は、知事が取るべきではない
- 知事という立場で行う威圧的な行動は他の職員を萎縮させる
- 齋藤知事の非常に強い叱責や理不尽な言動によって、職員が齋藤知事に忖度せざるを得ず、ルールに則った県民本位の職務遂行が叶わなくなっている
と、非常に手厳しい評価が行われています。


特に、「部下には高い水準を課しながら、自分はその基準を守らず特別扱いとする態度」「非常に強い叱責や理不尽な言動が職員のルール違反を招いた」と、
パワハラ問題から見える斎藤知事の、知事としての資質を断罪した
と言う点は、多くの県職員が斎藤知事に対して抱いている印象と一致しており、非常に兵庫県組織のガバナンスを考える上において、非常に納得度の高い内容になっていると言えるでしょう。
【ポイント②】公益通報者保護法違反のおそれを指摘
続いて、これは百条委員会の当初には挙がっておらず、議論の中で後に追加された議題なのですが、「公益通報者保護について」でも、非常に厳しい指摘がなされています。
この問題は、端的に言うと、「元西播磨県民局長が行った行為は公益通報であり、本来保護されるべきところ、逆に当事者によって不利益処分を受けるという、公益通報者保護法違反があったのではないか?」というものです。
これらについても、報告書では、
- 斎藤知事はもろもろ主張しているが、文書は公益通報者保護法上の外部公益通報にあたる可能性が高い
- 文書内容の事実確認より通報者の特定を優先した調査は公益通報者保護法違反であり、現在も違法状態が続いている可能性がある
- 県民局長の職を解き、通報者を公表したことは告発者潰しと捉えられかねない不適切な対応
- 通報対象者が調査を行ったことは不適切であり、独立した第三者に調査させるべきだった
と、こちらも厳しく斎藤知事や片山副知事など当時本件の対応にあたった関係者を厳しく断じています。
また、これに加えて、
- 公用メールの調査は不適切であった上、私用スマートフォンのLINEを確認する行為は人権配慮を欠くもの
- 3月27日の斎藤知事の記者会見は部下の進言を無視したもの
- 公益通報者保護法への理解が欠けている。「法律に違反しなければ良い」ではなく、法律の趣旨を尊重したうえで遵守する姿勢を示すことが重要
- 井ノ本元総務部長が議員に対して情報漏えいを行った行為について、地方公務員法違反を否定できる要素は皆無に等しい。背景や関係者等を明らかにすべき。この問題への対応は元県民局長への処分とあまりにも異なる
と、背景事情にあるものも含めて、こちらもさまざまな問題点を鋭く指摘しています。
斎藤知事は常々「違法ではない」というスタンスをとっていましたが、適法かどうかもあやしい上、
ことは、非常に意義深いものだと考えます。
こういった「法の趣旨を踏まえた対応」というのは、まさに首長、そして自治体職員にとって必須のスキルなわけですが、それをトップである斎藤知事が出来ていなかったという点は、こちらも知事としての資質が足りないと指摘したも同然だと評価できるでしょう。
奥谷委員長「事実無根でも、うそ八百でもなかった」
そして、この報告書をとりまとめた百条委員会委員長の奥谷県議は、記者会見で、



「元県民局長作成の文書については事実無根でもないし、嘘八百でもなかったというのが我々の調査結果」
という説明を行いました。
思えば、この文書問題は、3月27日の記者会見で、斎藤知事が「事実無根」「うそ八百」と当該文書と元西播磨県民局長をののしったことで、明るみとなったわけですが…
その斎藤知事の記者会見での言葉「事実無根」「うそ八百」という言葉を、報告書をもって否定した…
政治的にさまざまな苦労があり、選挙期間中には自宅に街宣まで回され、心労が絶えなかった奥谷県議ですが、百条委員会の委員長として、立派な成果を残して下さったと感じています。
そして、志半ばでこの世を去られ、報告書の完成を見ることが出来なかった竹内元県議のことにも思いを馳せて下さったのもまた、奥谷県議のあたたかい正義感が垣間見えた瞬間だったように思います。
まとめ
以上、本日は3月4日に百条委員会に示された報告書について、その内容を速報的にご紹介するとともに、特に特徴的なところについてピックアップして、解説させていただきました。
この報告書は全40ページにわたり、一連の問題について、非常に明確かつ網羅的に問題点を洗い出してくれており、非常に分かりやすい内容となっています。
その中でも特に多くのページが割かれたのが、今回ご紹介したパワハラと公益通報者保護法に関する指摘です。
そして、これらのどちらもが、本質的な問題として「知事の資質」を問うているところは、非常に大きいと感じます。
きょう以降、斎藤知事との議論は、この「百条委員会報告書」に記載された内容がベースになってくると思いますが、この中には、大きな論点から小さな論点まで、さまざまな議論ができる要素が詰まっています。
この報告書ももまた、兵庫県政について議論する上で、とても重要な「1次ソース」です。関心のある方には、ぜひ原典をご一読いただき、一連の事案について、理解を深めていただきたいと思います。
そして、何より、さまざまな苦労・課題があった中、強い意志を持ってこの報告書を完成させた奥谷謙一県議、そして志半ばでこの世を去られた竹内元県議に、心からの敬意を払って、本稿を終わりたいと思います。