
皆さん、こんにちは!兵庫県でギター女子をやっている、さくらです!
元西播磨県民局長の内部告発文書に端を発して、斎藤知事のさまざまな問題が明らかになった、いわゆる「文書問題」は、今なお兵庫県政を大混乱に陥れています。
その中でも特に大きな問題として取り上げられるのが、株式会社merchuによる公職選挙法違反の疑い。公職選挙法で禁止されている、有償でのSNS運用を行ったとして、刑事告発を受けている事案です。
この件について、株式会社merchuも、そしてその代表取締役であり、SNSの運用に奮闘していた当事者である折田楓さんも、事案発覚後、一切なにも言及しておらず、
兵庫県民の立場でみると音信不通の状態
になっています。
一方で、株式会社merchuは、他自治体のSNS運用を業務として請け負っており、「音信不通」では業務が不履行になってしまいます。
株式会社merchuと折田楓さんは、果たして他自治体の業務をきちんと遂行できているのでしょうか…。
そして、今後は果たしてどうなるのか。
本日は、兵庫県在住のギター女子・さくらが、株式会社merchuが兵庫県外において請け負っている業務の現状と今後について、考察しようと思います。

なお、merchu社に対しては、「キラキラ広報」という批判もあるようですが、本稿ではそこにあまり言及せず、実務的な考察を行います。


株式会社merchuとは
まず、そもそも「株式会社merchu」について、簡単にご説明です。
株式会社merchu(メルチュ)は、兵庫県西宮市に拠点を置くPR会社であり、2017年10月5日に設立されました。代表取締役の折田楓氏のもと、Instagramを中心にしたSNSや、Webを活用したオンラインでのブランディングやマーケティングを軸に、プロデュースやプロモーションなど多岐にわたるサービスを提供しています。


主な事業内容としては、広報・PRコンサルティング事業、ブランディング事業、自社メディアブランド事業が挙げられます。具体的には、SNS運用代行・コンサルティング、デジタル広告運用、SNSセミナー・起業セミナーの開催、写真・動画撮影、デザイン制作、Web制作(ホームページ・LPなど)など、多様なサービスを展開しています。
また、merchuはその取り組みが評価され、総務省「テレワーク先駆者百選」に選出される他、兵庫県の「ミモザ企業」に選ばれるなど、数々の認定を受けています。
一方、そんなmerchuに負の光が当たってしまうのが、例の兵庫県知事選挙でした。
2024年11月、兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦氏の広報・SNS戦略をPR会社merchuの代表・折田楓が担当していたことが公表されました。折田氏は、斎藤氏のSNS運用に関する様々な業務を監修したとnoteで説明しましたが、これによりmerchuが報酬を受け取っていた場合、公職選挙法違反となるとの指摘がありました。
折田氏は報道陣の取材に「答えるなと言われている」とコメントを避け、その後記事を一部修正し、SNS投稿を削除しました。
また、11月末には折田氏が予定されていた表彰式を欠席し、merchu主催のセミナーも中止されました。さらに、斎藤氏の代理人弁護士は折田氏の主張に反論し、斎藤陣営が個人の応援活動として依頼したものではないと述べました。その後、神戸学院大学教授の上脇氏と弁護士の郷原氏が斎藤氏と折田氏を公職選挙法違反の疑いで刑事告発するなど、株式会社merchuを取り巻く環境は、非常に厳しいものとなっています。
株式会社merchuが請け負っているPR業務は3件
さて、そんなmerchuですが、PR会社として、兵庫県以外の自治体でも業務を請け負っています。
2024年度において、株式会社merchuが請け負っている自治体向けPR業務は、少なくとも3件あるようです。
- 広島市観光政策部「SNS活用プロモーション業務」
- 高知県広報広聴課「SNS公式アカウント分析等委託業務」
- 徳島県県民ふれあい課「SNSを主軸とした徳島新時代情報発信業務」
これらについては、兵庫県から物理的に離れており、かつ圏域も異なるので、兵庫県における混乱の状況が、必ずしも実感をもって伝わっていないエリアだと考えられます。
一方で、業務受託者たるmerchuは、兵庫県においてはみなさんご案内のように、代表取締役の折田楓さんが公職選挙法違反の疑いで刑事告発をされている状況にあります。



詳しくは、下記リンク先から告発状の原文をご覧ください。
広島市SNSプロモーション推進業務は…
ではまず最初に、広島市SNSプロモーション推進業務を見てみます。
こちらは、広島市において公募型プロポーザルが行われ、その結果としてmerchuが事業者として選定され、受託するに至っています。
この業務については、過去から同様のプロポーザルが行われ、merchuが毎年応札できているようで、令和元年度から本業務を継続して受託できていることが確認できています。
基本的には20〜30代の女性をメインターゲットに、SNSで魅力をPRする業務を請け負っていたようですが…その中で、折田楓さんが、原爆ドームの歴史的な重みを踏まえた情報発信をできていないことが、強く批判されていました。
このように、折田楓さんのmerchuが取り組んだ広島市でのPR業務は、なかなか批判が強いようですが、一方で
広島市観光政策部のInstagramは、兵庫県知事選挙における刑事告発を受けた後も、何事もなかったかのように更新
が続いています。
実際、報道等によると、広島市の担当課はmerchuの折田楓さんと普通に連絡が取れているようです。
「折田代表とは今も連絡を取り合っており、ずっと変わらず業務を続けてもらっています」(広島市観光政策部)
※日刊ゲンダイ記事より
高知県のSNS公式アカウント分析等委託業務は…
続いて、高知県広報広聴課「SNS公式アカウント分析等委託業務」を見ていきます。
こちらは、2024年度の業務として、同様にmerchuが公募型プロポーザルを勝ち抜いて業務を受託しています。
なお、前年度、2023年度は別の業者が受託していたので、merchuにとっては今年が事業初年度となる格好です。
この業務は、SNSを運用するというよりも、SNS運用にかかるパフォーマンス分析や助言提案が内容になっています。
こちらも、先の報道によると、
この間、折田氏はメディアの前に一切、姿を現さず、メルチュのオフィスはもぬけの殻。雲隠れを続ける折田氏は今、何をしているのか。
「オンライン会議で顔を合わせましたが、以前と変わりない様子でした」
そう語るのは高知県広報広聴課の担当者だ。メルチュは今年度、同広聴課の「SNS公式アカウント分析等委託業務」のコンペを約246万円で落札。今年3月末まで業務を委託されている。担当者が続ける。
「騒ぎになってすぐ連絡があり、『大丈夫です』と。今も業務に支障は生じておりません」
※日刊ゲンダイ記事より
とのことで、merchuの折田楓さんは、兵庫県外の自治体とは普通に連絡が取れていることが分かります。
徳島県「SNSを主軸とした徳島新時代情報発信業務」も…
そして、徳島県県民ふれあい課が発注している「SNSを主軸とした徳島新時代情報発信業務」も見てみましょう。
こちらも先の2自治体と同様に、公募型プロポーザル方式によって業者が募集され、株式会社merchuが受託に至っています。
こちらは、業務の詳細が上記ページには載っていないのですが、県が「県外企業に業務を発注した理由」というものを公表しており、その中で業務内容の記載があります。
【契約内容】SNS運用分析・アドバイス等業務、縦型ショート動画の制作、SNS(WEB)広告の配信
【契約の相手方及び所在地】株式会社merchu、兵庫県
【県外企業を選定した理由】本業務は、高度な企画力・技術力・専門性が要求されるため、公募型プロポーザル方式により契約先候補の選定を行った。
※出典:https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/956925.pdf
こちらも、SNS自体の運用というよりは、分析・アドバイス等がメイン業務となっている一方、縦型ショート動画の制作といった、コンテンツ作成も行われています。
この徳島県についても、先の日刊ゲンダイの記事において、
「担当の方から『予定通りやります』と報告があり、本件の依頼は滞りなくこなしています」(徳島県県民ふれあい課)
※日刊ゲンダイ記事より
と、やはり徳島県においても、merchuと普通にやりとりできていることが明らかにされています。
merchuの公選法違反が疑われる中…今後は?
さて、先の日刊ゲンダイ記事には、このようなことも書かれていました。
渦中の人になっても「仕事きっちり」とは抜け目のない折田氏だが、いずれの担当者も「知事選の一件については特に説明をいただいていない」と声を揃えた。
※日刊ゲンダイ記事より
ここまでの話をまとめると、
- merchu折田楓さんに公職選挙法違反の疑いがある状況でも、merchuは粛々とSNS関連業務を発注している3自治体の業務を遂行している
- 3自治体の担当課は、merchuの折田楓さんや担当者と普通にやりとりができている
- 一方で、merchu折田楓さんは、どの自治体に対しても公選法違反問題について説明をしていない
- そして、どの自治体も、積極的に説明は求めていない(と思われる)
ということが分かります。
今年度の業務遂行は理解できる
今年度は受注業務を粛々と遂行しているということは、3自治体にとってもmerchuにとっても必要なことだと理解します。
3自治体にとっては、仮にmerchuが業務履行困難状態になると、普通に困りますし、委託料の減額や場合によっては損害賠償を請求したりといった余計な手間も発生しますので、できればこれは避けたいでしょう。
また、merchuの側にとっても、今年度の業務が不履行となると、会社の経営的に大ダメージを受けてしまうでしょうから、既に受託している業務は、責任を持ってやりきりたいはず。
ここまでは理解できる話です。
予算議会で説明しきれるのか
しかし、問題になるのは来年です。
おそらく3自治体は、来年度予算においてもこれらの業務にかかる必要経費を計上し、今後、議会の審議を受けることでしょう。
しかし、3自治体がかかる業務を株式会社merchuに発注していることは、一連の報道もあって周知の事実となりましたし、特に広島市においては原爆ドームの関係の投稿が炎上したことで、merchuに対してかなり批判的な視線が集まることは、容易に想像できます。
このような状況下で、各自治体とも、議会の審議を受けるとなると、



公職選挙法の違反が疑われるような会社に業務を発注して大丈夫ですか?
と問われることは、目に見えています。自治体にとって、議会で事業を批判的に論じられることは、できれば避けたいでしょうから、こういう問いに対しては、しっかりと誠意をもった対応をしなければなりません。
来年度の業務履行体制は?
加えて、3自治体ともに、委託業務は公募型プロポーザル方式で事業者を募集しているわけですが、この方式で事業者を募集するときは、応募者は企画提案のプレゼンを行い、その後に質疑応答が行われることが一般的です。
その質疑応答の場で、発注者は、
「公職選挙法違反の疑いで告訴されている状況だが、年間通して業務を履行できる体制にあるのか」
を確実に問わないといけません。
現状、公職選挙法違反の疑いについては、かなりの客観的証拠がSNSや自身がアップしたnote、動画などによって明らかにされており、告発がなされている中、「絶対に大丈夫」と言える状況にはありません。
そうした状況の中、業務の履行体制が年間通じて確保できるのか、法的措置への対応等で業務が止まることはないかを確認するプロセスは、絶対に必要だと言えるでしょう。
指名停止のリスクは?
そして、公職選挙法違反の嫌疑がかかっている状態では
指名停止のリスク
にも注意しなければなりません。
一般に、代表取締役に対して何らかの公訴がなされた場合、当該事業者は一定期間、指名停止になります。指名停止になると、公募型プロポーザルの応募も止められることが通常なので、もし公選法違反での公訴があると、事業の応募もできなくなってしまいます。
たとえば、広島市の指名停止措置要綱では、次のようにされています。
広島市競争入札参加資格者指名停止措置要綱
別表(指名停止措置要件)
前各号に掲げる場合のほか、業務(本市発注の請負等に係るものを除く。)に関して不正又は不誠実な行為等をし、請負等の契約の相手方として不適当であるとき。
ア 代表者等が法令違反の容疑により逮捕され、又は逮捕を経ないで公訴を提起されたとき。 1か月以上9か月以内
この「指名停止期間」に重なる形で公募型プロポーザルの応募期間があると、通常は業務を受託することができなくなるのです。
この点から考察しても、株式会社merchuが来年度の業務を今年度と同様に受託するのは、難しくなる可能性が想定されるところです。



自治体業務受託は「信頼ある会社としかできない」こと、折田楓さん自身も動画で語っておられるくらいなので、現状はよくご理解されているかと思います。
まとめ
以上、本日は、公職選挙法違反で告訴されている折田楓さんが代表取締役を務める株式会社merchuについて、現在、兵庫県外の自治体で取り組んでいる業務について整理するとともに、今後の見通しについて考察いたしました。
2024年度の業務については、公職選挙法違反の疑いで告訴されている中にあっても、委託した3自治体ともに粛々と業務が履行されていることが確認されています。
一方で、来年度となると、議会の目や業務履行体制、さらには指名停止のリスクなどがあることから、今年度と同様の業務が履行できるかどうかは、不透明な状況です。
株式会社merchuは、兵庫県知事選挙にかかわってしまったことでこのようなことになってしまいましたが、本来的にはPR会社として、社会的にも対従業員的にも果たすべき役割があったはずです。
その役割を果たす上で、現状の混乱状況は決して望ましくないでしょう。
一般に、
公の業務を請け負っている企業に不祥事等が起こった場合、誠意を持ってできるだけ早期に解決し、指名停止期間をできるだけ短くして、次の業務の受託に向かうのがセオリー
です。
株式会社merchuは、3自治体の担当者とはやりとりを続けているのかもしれませんが、現時点において、兵庫県民に対しては何らの説明も行っておりません。
株式会社merchuは、一連の兵庫県知事選挙の問題でかなり強い批判を浴びましたが、一方でSNS発信のノウハウについては一定の評価を得ていることも事実です。
株式会社merchuが今後も持続し、そして従業員の皆さんの生活を守るためにも、本件にかかる疑惑に対しては、一刻も早い説明責任を果たし、そして指名停止を甘受して、再びPR会社としての職務に邁進することが望ましいのでは…
私は、そのように思わずにはいられません。

