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社会とマーケティング

知って納得!「デジタルアドレスとは?」郵便番号に代わる新しい住所補完を解説

デジタルアドレスは、日本郵便が2025年5月26日に正式サービスを開始した、住所を7桁の英数字で表現できる新しいサービスです。

このサービスは2024年11月から体験版として提供されていましたが、今回正式版として本格運用がスタートしました。

個人に「ABC-1234」といった固有の番号が割り当てられ、ネット通販などでの住所入力時に従来の郵便番号や住所の代わりに、この7桁の番号を入力するだけで荷物を受け取ることができます。

現時点では郵便局アプリでのゆうパック送り状作成における自動住所入力にのみ対応していますが、今後パートナー企業を含めて順次利用可能なサービスを拡大していく予定です。

極端なことを言うとデジタルアドレスとDNSは同じ役割になる

コンピュータネットワークにおいてサーバーのIPアドレス(住所)と人間が判読できるアドレス情報であるドメインを変換するシステムの役割にDNSと言うものがある。

これを説明する時によく例えられるのが郵便番号であったが郵便番号はDNSの様にその
サービスに直接アクセスすることはできない。

しかし、デジタルアドレスと言うシステムになれば建物情報まで変換の範囲に含まれるため
DNSから逆引きの仕組みだけを取り除いたとイメージすれば理解しやすいと思う。

誕生の背景

住所入力の不便さ

たとえば、オンラインストアなど

Webで住所を入力する時住所を入力するのは、意外と時間がかかってしまうもの。
いつも使っている住所を自動入力に設定していても、フォームにうまく入らなかったり、
全角半角が指定されていてエラーになってしまったりすることも。

だれかへの贈り物など、普段使わない住所の場合は、イチから入力する必要もあって、
なおさら時間がかかってしまう。

住所の手書きの手間

たとえば、申請書類など大量の書類に手書きで記入する時デジタル化が進んでいるとはいえ、病院の問診票や、行政の申請書類、会員登録の記入用紙など、手書きで住所を記入する場面は、まだまだたくさんあります。

単純に時間がかかるだけでなく、こうした書類はなぜか忙しいときに限って重なってしまうことも。

住所変更手続きの手間

たとえば、引越し様々な場所やサービスで住所変更の手続きを行う時役所、銀行、勤め先、ECサイト、学校…引越しなどで住所が変わると、あらゆる場所やサービスで住所変更の手続きが必要になりますが、把握するだけでもひと苦労。

ひとつの手続きだけでも時間がかかるのに、すべて対応するのはとても大変に感じますよね。

従来の郵便番号との違いとメリット

町域や郵便区を超えた詳細住所の表現

これまでの郵便番号は都道府県などの郵便区域や市区町村並びに大字などの大まかな住所を
郵便局のAPIデータベースに関連づけることでオンラインフォームなどでの住所入力を補完することが目的です。

このため、EC事業者各社で独自のデータベースを用意し郵便番号と住所並びに氏名を
各社のアカウント情報と関連付ける名寄と言う作業が必要でした。

また、郵便番号では○○県○○市○○までしか関連付けれないので郵便配達などに
おける同一住所複数建物問題と言うものが発生してしまいます。

これによる誤配を防ぐために政府より導入されたのが住民基本台帳システムにおける
住居表示と言う手続きです。

市区町村長への届出で同一住所における補助番号(枝番)を採番してもらいそれを
住基ネットに登録することで住居表示をする制度です。

しかし、これを使うと住所が余計に長くなってしまいます。

例:○○県○○市○○ x丁目xx番xx号-2

同じ住所に戸建建物が複数あり誤配等でお困りの方へ|板橋区公式ホームページ

このような情報や建物名までをまとめて入力補完できるようにするのがデジタルアドレス
です。

日常生活での具体的なメリット

デジタルアドレスがめざすのは「住所がもっと便利になる未来」です。
具体的には以下のような課題の解決を目指しています。

  • 長い住所を書いたり入力しなくても郵便や荷物が届く
  • 引越しの住所変更をまとめて一気にできる
  • 住所ミスで起きる配送のムダがなくなる
  • 何度も住所を書く手間がなくなる
  • 結婚や引越し後の住所変更が楽になる。

私はこれらの課題のみならずEC事業者各社で保有する個人情報の削減につながり
プライバシー保護の強化にもつながると考えています。

デジタルアドレスの詳しい仕組み

デジタルアドレスの具体的な仕組みは上図の通りゆうIDと呼ばれる個人識別子を基に
デジタルアドレス用のデータベースの中から英数字7桁のランダム配列のデジタルアドレス
を発行しこれをゆうIDと同じ識別子に関連付けて記録します。

ECサイトの注文フォームなどでデジタルアドレスが入力されたとき、
「郵便番号・デジタルアドレスAPI」以下APIを通じてデジタルアドレスに紐づく
ユーザー識別子を基にゆうIDデータベース上に記録される住所データを検索します。

該当する住所データが見つかった場合ECサイトの注文フォームの住所欄に反映させて
終了です。

ゆうIDとは?

日本郵便が提供する無料の会員ID

2024年5月に、ゆうびんIDから名称変更した。 利用者は転居の届け出や集配、再配達の依頼などをウェブとスマートフォンアプリからできるようになる。

郵便だけでなく、日本郵政傘下のかんぽ生命保険のサービスとも連携するために使える。 現状では個人と法人の合計約1500万のIDが使われている。

デジタルアドレスのセキュリティ

日本郵便は以下のデジタルアドレスのセキュリティ面における特徴を公式サイトで公表
している。

  • 住所や氏名からの逆引き制限
    • 第三者にデジタルアドレスを知られた場合でも、
      あなたや同居者の名前等を検索することはできません。
    • 住所や名前から、デジタルアドレスを調べることはできません。
  • 無作為検索の抑制
  • デジタルアドレスの即時廃止
  • リレーショナルデータベースを活用した冗長的な運用

住所や氏名からの逆引き制限

コンピュータネットワークなどの分野においてはそのアドレスとの整合性を確かめたりすることなどを目的にアドレスからドメインを検索する逆引きと言う処理をする場合がある。

これを行うことで住所や氏名から郵便番号を知ると言うことが可能になるがこれが可能になってしまうと個人情報は駄々洩れになってしまうため郵便番号同様にデジタルアドレスからは逆引きすることはできない設計となっている。

つまり、メールアドレスや社員番号におけるランダム配列のアドレスがデータベースを用いて個人を特定できる氏名などと関連付けない場合個人情報に該当しないのと同じように、

デジタルアドレスだけでは検索を行わない限り住所を第三者が把握できない仕組みとなっている。

無作為検索の抑制

現代におけるすべての個人情報などを扱うAPI(アプリケーションインターフェース)では
無作為検索による個人情報の漏洩やシステムに対する高負荷によって障害の発生防ぐために
API操作の回数制限(レートリミット)が設定されている。

同システムにも例外なく設定されており無作為なる検索によって個人情報が流出することが無いように設計されている。

「郵便番号・デジタルアドレスAPI」を活用することを検討する事業者は仕様書などに
レートリミットの制限値が記載されていないため開発時に事前に日本郵便のシステム担当者に確認することが推奨される。

デジタルアドレスの即時廃止・即時再発行による不正利用防止

日本郵便では万が一にデジタルアドレスからの住所流出を想定して、デジタルアドレスの
即時廃止と再発行を同様のシステム内で行えるように設計している。

これにより、デジタルアドレスが流出したときの詐欺等の不正利用を抑止できる。

デジタルアドレスの即時廃止・即時再発行による不正利用防止

例:悪意ある第三者にデジタルアドレスを教えてしまっていた
               ↓

第三者がデジタルアドレスより住所情報を取得
               ↓

         デジタルアドレスの廃止処理

               ↓

更なる悪意ある第三者が共有されたデジタルアドレスより検索

               ↓

            該当データ無し

となるため更なる詐欺被害の防止につながると考えれるが一方7桁であると言うことで
利用できるアドレス範囲(発行できるアドレスの組み合わせの上限)が少ないことで再利用されてしまうのではないかと言う懸念も指摘されている。

確かに16進数を用いて128ビットで表記するIPv6アドレスは、
約 2128(約340澗 = 3.4×1038)と通りの組み合わせがあるがデジタルアドレスだと、

アドレス空間は2^35(約340億通り)なので従来のIPv4アドレス
約 232(約43億 = 4.3×109)+αしかないのでいずれ枯渇してしまい再利用される
ことになると言える。

リレーショナルデータベースを活用した冗長的な運用

リレーショナルデータベースの一番の特徴はその冗長性である。

1つの共通した識別情報を用意すれば異なるデータベース上に記録された異なるデータも
検索可能となるため同じサーバー上にデータを補完する必要がなくなるため表で説明しているように個人情報とデジタルアドレスのデータを切り離して運用することができる。

これにより、デジタルアドレスのデータベース内でのみ大規模システム障害が発生した場合はゆうIDシステムを停止しないでゆうIDを用いるサービスを提供し続けることが可能。

取得方法と使い方の詳細手順

郵便局アプリでの取得方法

デジタルアドレスの取得には、まずゆうIDの登録が必須となります。
取得は郵便局アプリまたはWebブラウザで可能です。

郵便局アプリでの取得手順:

  1. 郵便局アプリをダウンロード
  2. アカウントタブをタップ
  3. 「関連サービス」の「デジタルアドレス」をタップ
  4. 画面の案内に沿って操作

取得は非常に簡単で削除もデジタルアドレスの管理画面から行えます。
ただしセキュリティ上の観点の都合で削除から10分間取得することはできない仕様です。

現在の使用方法

2025年5月時点では、郵便局アプリでのゆうパック送り状作成機能でデジタルアドレスが活用可能です。「デジタルアドレスで入力」をタップし、デジタルアドレスを入力して「住所に変換する」をタップすることで住所を自動入力できます。

取得・利用にかかる費用

デジタルアドレスは完全に無料で取得・利用できるサービスです。
ただし、郵便局の窓口では取得できず、デジタル環境での手続きが必要となります。

現在使える場所と今後の展開予定

現段階での対応サービス

現在、デジタルアドレスが使用できるのは郵便局アプリでのゆうパック・ゆうパケットの送り状作成機能のみです。日本郵便では、住所にまつわる課題を持つ様々な企業や団体との”住所改革”を進めており、新しいインフラづくりに挑戦している段階です。

API提供と企業連携

日本郵便は2025年5月より、郵便番号・デジタルアドレスAPIの無料提供を開始しました。このAPIにより、1つのAPIで郵便番号とデジタルアドレスのそれぞれから住所取得が可能となり、企業のシステムへの導入が促進される見込みです。

郵便番号と同じ7桁のため、既存の郵便番号入力欄を英数字入力に対応するだけで導入が可能という利便性も提供されています。

将来的な活用範囲の拡大

日本郵便はネット通販サイトや金融機関などでの新サービス活用を想定しており、パートナー企業での展開も準備中です。デジタルアドレスを利用できるサービスは順次拡大中で、住所の利便性が飛躍的に向上する未来が期待されています。

気になる安全性と注意点

現在の制限事項

重要な注意点として、デジタルアドレスの記載のみでは郵便物・荷物を送ることはできません。実際の郵便物の送受信には、従来通り郵便番号・住所・氏名の記載が必要です。

デジタルアドレス導入後も、郵便物を受け取ったり送ったりする際の現在のやり方は引き続き利用できるため、段階的な移行が可能です。

住所管理の利便性向上

デジタルアドレスをキーにすることで、複数サービスに横断する住所の名寄せにも活用できます。また、転居届(e転居)の提出をデジタルアドレスに反映することで、ユーザーの転居後住所の取得が容易になるという将来的な展望も示されています。

このように、デジタルアドレスは単なる入力の簡素化だけでなく、住所管理全体の効率化を目指した包括的なサービスとして設計されています。今後の展開に注目が集まる革新的なサービスと言えるでしょう。

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爲國 勇芽
生まれも育ちも埼玉のフリーター広告テクノロジーや情報テクノロジー興味深くいつもPR Timesを眺めています。