
皆さん、こんにちは!兵庫県でギター女子をやっている、さくらです!
元西播磨県民局長による内部告発文書をきっかけに、斎藤知事やその側近たちのさまざまな問題が明らかになった、いわゆる「文書問題」ですが、これについては再び行われた兵庫県知事選挙において、斎藤知事が再選を果たしたことにより、一応の決着を見たかのように思えましたが…
一方で、兵庫県政の混乱は収まる気配がないどころか、さらに強まっているのが現状です。
そうした中、2025年2月10日、斎藤知事が兵庫県の令和7年度当初予算案を公表し、記者会見を行いましたが、その当初予算案にはいくつかの問題点があります。
本日は、兵庫県在住のギター女子・さくらが、令和7年度の兵庫県当初予算案の問題点について、考察してみようと思います。
令和7年度兵庫県予算の概要
兵庫県は2025年度の一般会計当初予算案を発表しました。
総額は2兆3582億円で、前年度比0.8%増となっています。斎藤元彦知事は「新たな躍動づくり予算」と位置づけ、防災や医療の充実(安全安心)、教育支援(若者支援)、万博関連(経済活性化)、県政運営基盤の構築の四つを柱としました。
主な重点施策
重点施策の一つは、県立大学の授業料無償化だとしています。また、多くの人が財源を心配していることもある中、安定した財源を確保するため、「無償化基金(仮称)」を設立するとしています。
また、大阪・関西万博関連の予算も重視し、県の産業や観光をPRする「ひょうごフィールドパビリオン」などを実施する方針です。
SNSの誹謗中傷対策としては、プロスポーツ選手による啓発や弁護士相談窓口の拡充を進め、6月定例会で「SNS条例」を制定したい考えを示しました。
このほか、主な事業として、防災対策に462億円、阪神・淡路大震災30年のサミット開催に1317万円、SNS誹謗中傷対策に1000万円を計上しました。
若者支援では、県立大学の授業料無償化に13.8億円、県立高校支援に32.8億円、不妊治療助成に1.8億円を充てています。また、万博関連には17.6億円を確保し、県内の誘客やイベント開催を推進する方針です。さらに、ツキノワグマ対策にも3625万円を計上しました。
一方で、新型コロナ関連の介護支援(7.5億円)や、空飛ぶクルマ関連(933万円)など、期間終了や見直しにより廃止された事業もあります。
編成上の課題もいくつか
一方で、今回の予算編成については、そのプロセスの中で知事の失職と再選という時期がありました。
そうした中にあっても、県庁の各部長が主導して編成を進め、再選後に知事の意向を反映したとされています。
歳入の約4割を占める県税は9982億円で、前年比8.9%増となりました。これは定額減税の終了や、企業業績の好調が主な要因とされています。
一方で、分収造林事業と地域整備事業の債務処理が必要となり、県債は1305億円(前年比16.7%増)に増加しました。これらの借金は1200億円にのぼり、県は10年かけて改善する計画で、新たに「行政改革推進債」を発行します。

詳細は、ぜひ兵庫県公式ホームページで、1次情報を参照してください!
令和7年度兵庫県予算の問題点
さて、このように編成された令和7年度予算ですが、いくつかの問題点があります。以下、それらをご紹介します。
【問題点①】実質公債費比率が悪化し起債許可団体⇒財政運営が国の監視下に
兵庫県は、毎年度、当初予算にあわせて将来の財政フレームを公表しています。
これは、財政状況の悪化に苦しんだ井戸知事時代、行革プランで財政計画や財政健全化法に基づく健全化判断比率を公表し、将来にわたっての財政運営の見通しを示していたときからの流れです。



健全化判断比率の将来見通しも公表しているのは、結構すごいことだと思います。
そこで示された実質公債費比率と将来負担比率の推移が、非常に悪いのです。特に実質公債費比率の悪化は著しいものがあります。
実質公債費比率は、借金の返済額(公債費)が標準的な財政規模に占める比率で、家計でたとえれば「年収の何%くらいローンの返済に充てているか」。
将来負担比率は、借金残高が標準的な財政規模に占める比率で、家計でたとえれば「年収の何倍の借金を抱えているか」。
これらは、全国の自治体が横並びで比較できる指標になっているのですが、兵庫県はどちらも47都道府県屈指の悪さで知られています。



これらの指標、「財政健全化法」という法律で定められているものですね。
県資料では2025年以降の見通ししか示されていませんので、これに私の方で調べた過去の数値も合わせて、並べて見ましょう。
決算年度 | 実質公債費比率(%) | 将来負担比率(%) |
---|---|---|
2017年度(平成29年度) | 16.2 | 338.8 |
2018年度(平成30年度) | 14.4 | 343.1 |
2019年度(令和元年度) | 14.6 | 342.7 |
2020年度(令和2年度) | 15.2 | 341.9 |
2021年度(令和3年度) | 15.4 | 319.4 |
2022年度(令和4年度) | 15.5 | 330.8 |
2023年度(令和5年度) | 16.3 | 321.5 |
2024年度(令和6年度)* | 17.2 | 312.6 |
2025年度(令和7年度)* | 19.8 | 308.6 |
2026年度(令和8年度)* | 21.5 | 306.9 |
2027年度(令和9年度)* | 23.0 | 299.6 |
2028年度(令和10年度)* | 23.0 | 292.9 |
※2024年度以降の数値は財政フレームに基づく推計値
これを見ると、
- 実質公債費比率は令和2年度から上昇傾向、特に令和5年度以降の上昇が著しい
- 一方で将来負担比率は減少
ということが伺えます。
特筆すべきは、
令和7年度の実質公債費比率が18%を超える見込みである
こと。この実質公債費比率が18%を超えるとどうなるかというと、
起債許可団体となり、地方債の発行に、総務省の許可が必要になる
のです。
地方債は、いわば「地方自治体の借金」なので、かつてはすべての団体が国の許可を得ないと発行できないものでしたが、地方分権の観点から、現在は総務省への同意または届け出で済むようになっています。
ただし、それは財政状況が普通の団体に限った話であり、財政状況が悪い自治体は、借金で破綻しては大変だからということで、総務省がきちんと監視できるよう、例外的に「地方債の発行には許可が必要」ということにしているのです。



これは国が地方自治体に意地悪しているわけではなくて、地方債というものの安全性を金融市場において担保するために、やむを得ず行われている、とされています。
従って、今年度の予算編成によって、
兵庫県の財政運営は、一定国の監視下に入った
ということになってしまったのです。
実質公債費比率の一時的な増加は、借金を返済するためにどうしても必要なプロセスなので、ある程度はやむを得ないのですが、
斎藤知事の就任以降、一貫して実質公債費比率が悪化している
という点は、指摘しておかなければならないでしょう。
【問題点②】大学無償化、万博…財政悪化状況なのに放漫財政
前述の「実質公債費比率の悪化」については、過去の負債を処理するためにどうしても必要なプロセスなので、これ自体を過度に責め立てる必要はない、という話もあります。
しかしながら、このような財政状況が見通せているのであれば、歳出を抑制し、増加する公債費に対応できるような予算を編成するのが、財政のセオリーです。
しかし、令和7年度の兵庫県予算を見ると、
- 県立大学の無償化
- 万博関連経費
といった、
効果が不確かであるにもかかわらず、多額の財源を必要とする事業
が目立つのです。
県立大学無償化については、
- なぜ政策効果を県立大学のみに限定するのか、その意図が不明
- 大学を無償化することによって得られる政策効果が不明
- 令和7年度からは県外の人に対する入学金軽減と、趣旨や意図が不明の制度拡充が開始
- 約14億円という巨額の財源が必要
という問題点があります。
また、万博関連事業費については、期間限定であるとはいえ、
- そもそも万博の政策的効果が全く見えない
- 万博は大阪府の事業であり、兵庫県が絡む意図が不明
- 万博がまともに実施されるのかさえ怪しい
といった問題点が指摘されています。
とはいえ、問題点や論点のない施策なんてないので、上記のような問題点だけをもって「令和7年度兵庫県予算はダメだ」というつもりはありません。
問題は、むしろ
後年度の財政運営が厳しくなるのが目に見えて明らかであるにもかかわらず、政治的意図が強く、かつ多額の財源を必要とする施策を展開している
ことなのです。
家計にたとえれば、来年度から住宅ローンの返済が本格化するから家計を見直さないといけないのに、高級車を買ったりお手伝いさんを雇ったりしているようなものです。
【問題点③】「県⽴⼤学授業料等無償化基⾦」が意味不明
県立大学の無償化については、多額の財源がかかる割に政策意図が不明であることは、私だけでなく県議会からも多くの指摘を受けています。
なので、県としてもこういった批判に対する何らかのアンサーが必要だと考えたことはうかがえます。
そこで出てきたのが、
の創設。
予算資料には、
県内在住者の兵庫県⽴⼤学・芸術⽂化観光専⾨職⼤学の⼊学料及び授業料の負担を解消するための事業費を安定的に確保するため、特定⽬的基⾦を設置
とあります。
この基金創設、はっきり言って意味不明だと言わざるを得ません。
というのも、基金というのは家計にたとえれば「貯金」ですが、この
「貯金」をどう貯めていくかの戦略が、全くもって不明
だからです。
令和7年度当初予算で50億円を積み立てる、とありますが、これは税投入で積み立てている基金であり、どこからか湧いて出た財源ではありません。
そして、この積み立てた基金は、単年度約14億円の事業に取り崩していくと、4年目には既に足りなくなってしまいます。
ですので、「基金を創設した」は別に県立大学の無償化に必要な財源を確保したことには、全くなっていないのです。
この基金に、いかに毎年14億円を超える積立を行うかという戦略を示さないままに「基金があるので財源は大丈夫です!」は、詐欺みたいな話
だと言わざるを得ないでしょう。
【問題点④】財政難に対応するための「改革」がない
斎藤知事は、文書問題や公職選挙法違反問題など、さまざまな疑惑や問題などを問われ続けてきましたが、そういった疑惑への回答の中で、



県政を前に進めたい



改革に取り組みたい
といったことを、何度も主張してきました。
しかし、
令和7年度兵庫県当初予算は、後年度の赤字が見込まれる厳しい状況の中なのに、行財政改革に取り組んだ形跡が全く見られない
のです。
たとえば、収支不足が見込まれるときに、真っ先に取り組まれるのが、人件費の削減。もちろんこれは、職員のモチベーションを下げたり、退職に拍車をかけたりといった「副作用」も指摘されるところであり、安易に切って良いカードではありません。



そうでなくても今、兵庫県は職員の離職や新人確保にかなり苦労していますし…
しかし、その「安易に切れないカード」を、たとえば井戸知事はこれまでの行革の中で使ってきました。職員の抵抗はきっと大きなものがあったでしょうが、それでも井戸知事は改革を断行したのです。
行財政構造改革(H20~H30)の成果(概要版)
・平成 20 年度から役職に応じて給与抑制措置を実施
(特別職:給料の減額(△20~△7%)等、一般職:給料の減額(△7~△2.5%)等)・平成27年度から段階的に抑制措置を縮小し、一般職については、管理職手当以外は
平成30年度末をもって解消
※県議会も県の取組を踏まえ、議員報酬月額等の減額措置を実施
(正副議長:報酬△10%、加算額△25%、議員:報酬△10% 等)
一方の斎藤知事はというと、財政フレームにおいてあれだけの赤字が見込まれているにもかかわらず、全く行財政改革を通じた収支均衡策をとろうとしていないのです。
言うなれば、
赤字に対して何の対策もせず、開き直ってやりたいことをやっているだけの予算
というふうに評価せざるを得ません。
分収造林事業問題は稲村氏や竹内氏が県議時代に指摘済み
なお、予算資料を見ると、「県政改革」と称して、「ひょうご農林機構の債務整理」に取り組もうとしています。
しかし、この取組は、債務整理の取組ではありますが、赤字対策ではありません。ましてや一時的に財源を必要とする取り組みであるから、これに着手するなら、なおのこと財源確保策に躍起にならないといけないはず。
加えて、これは別に斎藤知事の政策的取組でも何でもなく、それこそ井戸知事時代の行革プランにおいてもその課題は指摘済みだったりします。
そして、兵庫県知事選挙に立候補した稲村和美さんや、百条委員会で鋭い指摘を見せていたものの、デマに基づく攻撃に心を痛めて自死した竹内英明さんが、県議会議員時代に、とっくに指摘していたものなのです。
平成20年 9月第296回定例会(第5日10月 2日)
No.22 いなむら和美議員しかし、今回の行財政構造改革では、これまで宿題になっていながら正面から取り上げていなかった課題として、分収造林事業を担ってきたみどり公社の財政悪化対策の必要性に加え、先行取得用地を環境林として県が計画的に取得し、適切に管理する必要性や方向性が明らかにされました。これらの先行取得用地については、先行取得そのものの妥当性に対する検証と県民への説明責任が求められることはもちろんですが、同時に、取得した用地をどのように活用するのか、将来世代へ過剰なツケとならないよう、その費用をどのように支払っていくのか、今後の対応が厳しく問われます。
令和 2年 12月第352回定例会(第2日12月 4日)
No.26 竹内英明議員質問の5は、公益社団法人兵庫みどり公社に対する県の早期抜本的経営支援についてであります。
この過去の政策の中で県が着手できない財政負担が残っている大型投資事業を慎重に検討すべき大きな理由となる、これがこの公社の問題であります。
公社が昨年3月にまとめた兵庫みどり公社中期経営方針の中で、金利は比較的低利で推移しているものの、公社の年間支払利息は多額であり、経営を圧迫しているとの記載がありました。調べましたところ、公社の金融機関からの借入れは、日本政策金融公庫から324億円、三井住友銀行から344億円で計668億円となっており、支払利息は昨年度だけで5億円、過去10年の支払利息の合計は62億円にもなっておりました。(中略)
このまま年間5億円もの利息を金融機関に払い続けていいのでしょうか。私は知事の20年の在任中で最後に残されている未着手の課題だと思っております。巨額の新規投資事業に着手する前に抜本的な公社支援の方向性を示す必要があると思いますが、ご所見をお伺いいたします。
稲村県議(当時)も、竹内県議(当時)も、どちらも財政通として知られていた議員ですが、そうした財政通の議員は、この問題に古くから注目し、指摘していたものです。
ですので、これらを「斎藤知事の改革の成果」と呼ぶのは、あまりにも無理があります。



特に稲村和美さんは、平成20年度の時点で既に取り上げていたわけですからね…。




まとめ:こんな予算が議会で通るのか
以上、本日は、兵庫県の令和7年度当初予算について、その問題点をいくつか指摘させていただきました。
令和7年度兵庫県当初予算は、斎藤知事が再選を経てから始めて議会に上程される予算になりますが、その中身を見ると、
- 実質公債費比率が将来にわたって18%を超え、起債許可団体として国に監視される
- 大学無償化や万博と言った、効果が見えない施策に漫然と財源を放出している
- 大学無償化の財源を基金に求めても、将来の財源は全く見えない
- 厳しい財政状況であるのに、お得意の「改革」が全くなされていない
と、問題点の非常に多い中身になっていると言わざるを得ません。
そして、このような問題点の多い令和7年度当初予算を議会に提案しようとしている斎藤知事は、公職選挙法違反で支援者が警察・検察の捜索を受けており、そもそも知事であることの正当性さえ疑われているような人なのです。




本稿では、あまり斎藤知事の政治的な問題には触れずに、予算としての問題点を中心に指摘してきましたが、そうした問題を含む予算を通せるかどうかは、知事と議会の関係性によるところが非常に大きくあります。
今の斎藤知事が、この予算を、果たして議会に説明して、理解を得られるのでしょうか…。
予算の問題点、そして知事の政治的正当性の両面から、この予算議会で議論が深まっていくことを、一人の県民として、見守っていきたいと思います。